Oculus Questの将来の可能性を示す『MRモード』と『アリーナモード』とは

Oculus Questの将来の可能性を示す『MRモード』と『アリーナモード』とは

2018年に行われたFacebook社(Oculus)が行なったイベント『Oculus Connect 5』で発表された『Oculus Quest(オキュラスクエスト)』は、PCやスマホが不要なスタンドアローン型のVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)です。

周囲の空間を3Dマッピングする『Oculus Insight』とは

出典:公式トレイラー

Oculus Questには、4つの広角イメージセンサーが備えられており、センサーから得た情報を最先端のコンピュータービジョンアルゴリズムを使い分析し、周囲の空間を詳細に3Dマッピングすることができます。

周囲の空間を3Dマッピングすることで、Oculus Questは本体の位置、またコントローラーの位置を『毎ミリ秒ごと』に計算しており、完全な6Dofを実現しています。

Oculusはこの空間トラッキング技術を『Oculus Insight(オキュラスインサイト)』と呼んでいます。Oculus Connect 5では、Oculus Insightの性能は、単に6Dofを実現するだけにとどまらないものであることを示していました。それが、『MRモード』と『アリーナモード』です。

現実空間とVRを行き来する『MRモード』

Oculus Connectで示された資料より。右側のMRの場合、現実空間のソファや絵画も取り込まれている

MRとは『Mixed Reality(複合現実)』の略で、バーチャルな世界に入り込むVR(仮想現実)や、現実の空間にオブジェクトを重ねるAR(拡張現実)とは異なるものです。MRは、壁や床、テーブルやソファといった、現実空間にあるオブジェクトを正確にトラッキングすることで、現実空間の中に仮想のオブジェクトを設置したり、置き換えたりすることができる技術です。

Oculus QuestのMRモードは、外の世界をそのまま写すのではなく、白い空間に輪郭を浮き上がらせるようなものになっています。

現在開発の初期の段階のものとして示された動画の中では、VRHMDをかぶったままキーボードをタイピングしたり、現実空間にいる人に呼ばれて振り返ったりしています。

通常VRHMDをかぶっていると外部の情報は遮断されてしまいますが、MRモードを使うことでVRと現実の両方の情報を把握できることのメリットがよくわかるようになっています。

Oculus で示された資料より。扉型のゲートをくぐればMRモードからVRモードに戻ることができるというデモ

またOculus Connectでは、VRの世界に没入したい場合は、扉型のゲートをくぐることでVRの世界へ戻ることができるといったデモも紹介されました。あくまで手法の一つではありますが、MRにより、現実とVRの境界線がなくなっていくことを感じられるデモです。

現実とVRの融合『アリーナモード』

出典:oculus.com

アリーナモードは、Oculus Insightの空間トラッキング技術と、ケーブルが不要というスタンドアローン型VRHMDの特徴を生かした実験的なモードです。

Oculus Connectでは、Oculus Rift、Oculus Goでも人気のシューティングゲーム『Dead and Buried』を複数人で楽しめるようにした『Dead and Buried Arena demo』が展示されました。

Dead and Buried Arenaは、西部劇の世界が舞台となった対戦シューティングで、3人対3人で遊ぶことができます。Oculus Questを装着したプレイヤーは、マーカーが入った床やダンボールが置かれた、バスケットコートほどの空間でプレイします。Oculus Questの中では、お互いのプレイヤーをアバターとして認識できるようになっており、またダンボールはOculus Questの中では身を隠すタルや木箱といった遮蔽物に置き換えられています。

Oculus Insightの性能は、マーカーがなくても3Dマッピングすることができますが、マーカーを記すことでバスケットコートほどの広さでも、正確に3Dマッピングできるようになっているとのことです。

『Dead and Buried Arena demo』の面白いところは、Oculus QuestだけでなくiPadから観戦もできるということです。

VRのコンテンツは、VRHMDを装着した人だけが体験できるものですが、iPadを通してリアルタイムに視聴することができることにより、ゲームに参加していない人にも何が起こっているのか知ることができます。

VRはしばしば閉じた世界になりがちですが、リアルタイムに第3者が参加できることで、楽しさを共有することができ、遊びや表現の幅がひろがります。たとえばVRのコンテンツがeスポーツになったとしたら、iPadのカメラがライブ中継をするカメラになり、エンターテイメント性が高まります。

MRはまだまだ実験段階、将来に期待

Oculus QuestのMR体験は、これまでのVRHMDの概念を大きく変えるものであります。

ただし、MRモード・アリーナモードはまだまだ実験段階であり、現時点の計画ではOculus Questのリリース時の段階ではSDKも含めて提供する予定はないとのこと。ただ、現段階のものでも完成度が高く、Oculus Questの将来を示したものとしてかなり期待が持てるものとなっています。

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